はじめに
城を訪れると、まず目に飛び込んでくるのが「門」。頑丈な木造の扉に鉄板が張られたものや、立派な櫓(やぐら)を伴うものなど、さまざまなデザインが存在する。城郭の門は単なる出入り口ではなく、防御や威厳を示す重要な要素だった。今回は、そんな城門の種類や特徴を紹介しながら、実際に訪れた城門の魅力もお届けしたい。
城郭の門の種類
城門にはいくつかの種類があり、構造や役割によって異なる。ここでは代表的なものを紹介しよう。
1. 櫓門(やぐらもん)
城門の上に櫓を備えた門。門の上に攻撃用の武者窓や石落としが設けられており、防御力が高いのが特徴。
▶️ 実際に訪れた城門 ー 彦根城の「天秤櫓門」
彦根城の天秤櫓門は、左右対称の美しい構造が特徴的。門をくぐると二重になった曲輪(くるわ)が現れ、侵入者を惑わせる仕掛けになっている。櫓門の威圧感を存分に感じられるスポットだ。
2. 高麗門(こうらいもん)
柱と屋根だけのシンプルな門。防御力は高くないが、枡形(ますがた)と呼ばれる小さな区画と組み合わせることで効果的に使われた。
▶️ 実際に訪れた城門 ー 江戸城・大手門
現在も東京に残る江戸城の大手門は高麗門と渡櫓門が組み合わさった構造。門をくぐるとすぐに直角に曲がる枡形が配置され、敵が突破しにくいように作られている。
3. 渡櫓門(わたりやぐらもん)
門の上に長い櫓を渡した門。櫓の内部には武者が配置され、攻撃に備えていた。
▶️ 実際に訪れた城門 ー 熊本城・頬当御門
熊本城の頬当御門は、渡櫓門の代表例。門の上に長い櫓が渡され、そこからの防御が可能になっている。熊本城らしい重厚な造りが印象的だ。
城門のデザインと意匠
城門は機能だけでなく、意匠(デザイン)にも工夫が凝らされている。
1. 鬼瓦や装飾瓦
城門の屋根には、鬼瓦や家紋入りの瓦が使われることが多い。特に徳川家の城では、三つ葉葵の紋が目を引く。
2. 黒漆塗りの扉と鉄板張り
門の扉には黒漆が塗られたり、鉄板が張られたりしているものが多い。これは単なる装飾ではなく、防火・防弾の役割を果たしている。
3. 枡形と門の配置
門を単独で設置せず、枡形と呼ばれる小さな区画を作ることで、侵入者を一度足止めし、横や上から攻撃できるようになっている。
城門めぐりの楽しみ方
城を訪れる際には、門の造りや防御の工夫を意識しながら歩いてみるのも面白い。例えば、以下のポイントを意識すると、より深く楽しめる。
- 門の上に櫓があるか? → 防御用か、それとも格式を示すためか?
- 扉の素材や装飾 → 黒漆塗り、鉄板張り、家紋入り瓦などをチェック
- 枡形の配置 → 直線的に通り抜けられるか、それとも曲がる構造になっているか
これらを意識しながら城門を巡ると、当時の武士たちの知恵や工夫が見えてくる。
おわりに
城の門は、ただの出入り口ではなく、城の防御と威厳を示す重要な存在だった。各地の城を訪れる際には、ぜひ門の造りや仕掛けに注目しながら歩いてみてほしい。
門の向こうに広がる歴史の風景を感じながら、城巡りの旅を楽しんでみよう。